沈殿物を撹拌

思ったこととか感じたことの備忘録です。

その熱量は共有できない

久しぶりに美容院に行った。

前に行ったのは息子が幼稚園に入る前だったので、少なくとも3月だ。そう考えると3ヶ月以上ぶり。道理で髪がボサボサである。

 

市内の美容院で行く場所は定めてなく、とりあえず3箇所を適当にルーチンしてる。今回予約したのは以前までよく行っていた比較的安価の店。しかし安いだけあり、前回施術してもらった時は担当の美容師さんが新卒1年目のような雰囲気で、仕上がりの左右の長さは違うわカラー中に飲み物を尋ねられて「あったかいコーヒーで」と頼んだら冷たい烏竜茶が出てくるわと(これはサービスなので訂正するにできず…)信用に欠ける対応だったので最近は足が遠のいていた。しかし、久々の美容院だし、指名料を払えば上手なベテランの方に綺麗に仕上げてもらえるのでは?と思い、美容師歴10年以上という方を指名料を払い予約した。

 

思えば、この安直な行動が何もかもの原因だった。

 

時間になり美容院に行くと、指名した担当の男性美容師がいた。なかなか個性的なファッションの方で、両腕に美容ハサミをモチーフにしたタトゥーを彫っている。私は自分でも入れていた頃があるし、前職は全身にタトゥーを入れているようなお客さんを相手にするバイクショップに務めていたのでタトゥー自体に偏見はないが、「今後一生、美容師以外の仕事はしない」という覚悟がスタイルから伝わり、それが今の私のテンションと剥離している。

 

「ご指名ありがとうございます。僕のブログは読んでくれましたか?」

 

席に着くなりその一言から始まり、私はたじろいだ。ブログ?確かに予約の際にご一読くださいとは書いてあった気がするが、正直そこまで目を通してはいない。すいません、拝読していなくて…と謝ると、別に気を悪くした様子はないが、そこからいま持っている髪の悩みを聞かれた。

量が多い、まとまらない、白髪が気になる、毛先が痛んでいる、などと伝えると、彼は真摯に聞いてくれ、そこから私の髪の現状と対策を色々と持論を交えて説明してくれる。

とてもありがたい。ありがたいことなのだが、言葉の端々に「追加料金」という単語が出てきて引っかかる。

どうやら彼を指名すると、予約時のメニューと指名料の他に「カラー施術料」「カット料」などが追加されるらしく、7000円前後で予約した料金からすでに3000円プラスされているらしい。そしてそれは彼のブログに記載されていることだったらしい。

料金と指名料だけでカット、カラーを行い、ベテランの腕で上手いこと仕上げてくれると思い込んでいた私はここで自分の失敗に気が付いた。予約したメニューでのカットはあくまでメンテナンスで、1cm程度しか切ってもらえないらしい。

 

担当美容師の彼は自分の経歴と腕に相当の自信と自負があるらしく、私の髪の悩みについても丹念に説明してくれているし、日々のケアについても考えてくれている。それは会話の熱量でよくわかるのだ。しかし、私が4歳の息子の子育て中でなかなかヘアケアの時間が取れないとこぼすと、「ご主人さんはすぐに帰ってきますか?」「頼れるご実家にお子さんを預けられますか?」などと聞いてくる。

主人は仕事が忙しくて帰りが遅いし、実家は両方とも飛行機の距離である。

 

髪の悩みの解消にはたまに行く美容院よりも、日々のヘアケアが大事だと言いたいのはわかるのだ。でも、正直に感じたことを書くと、そういう時間が取れないからこそ、たまに行く美容院くらいプロの手で綺麗に仕上げてもらって帰りたい。

私が美容院に’求めているのはそういった癒しであって、手間のかかる悩みの解消法ではない。

美容師の彼は毎日お客さんの髪に触れて、お客さんの髪の事ばかり考え、真剣に仕事に向き合っているのだろう。その熱量には感心する。しかし、残念ながら、私は私自身の髪に対してそこまでの熱量を持っていいない。

 

ニーズが全く合っていない。担当してもらう人を完全に間違えたのだ。

 

開始10分くらいでもう帰りたかった。知識と施術の腕を求めていないのに予約してしまった美容師の彼にも申し訳ない。しかし途中退席するわけにもいかず、内心(やっぱりここの美容院は来るのをやめよう…)と決意しながら会話という名のヘアケア法と施術を受けた。

 

いつもよりかなり多くの金額を払ったが、自分の気持ちが沈んていたからか、仕上がりが良いとは思えなかった。